
「密度」も「比重」も、理科の授業で習ったはずなのに、いざ説明しようとすると意外と言葉に詰まってしまう——そんな方も多いのではないでしょうか。
「密度・比重とは何か」という基本から、
「実際にどうやって測るのか(JIS規格)」
「身の回りの物質の密度はどれくらいなのか」
「温度が変わると密度はどうなるのか」
まで、化学初心者にもわかりやすく解説していきます。
密度とは?比重とは?

密度とは
密度とは、「一定の体積あたりに、どれくらいの質量(重さ)が詰まっているか」を表す量です。
式で書くとこうなります。
密度(ρ)= 質量(m)÷ 体積(V)
単位は g/cm³(グラム毎立方センチメートル)や kg/m³(キログラム毎立方メートル)がよく使われます。
たとえば「同じ大きさ(1cm³)の鉄と発泡スチロールがあったら、鉄の方がずっと重い」というのは、鉄の方が密度が大きいからです。同じ体積の中に、より多くの質量がぎゅっと詰まっているイメージです。

比重とは
比重とは、「ある物質の密度が、基準となる物質の密度の何倍か」を表す数値です。
比重 = ある物質の密度 ÷ 基準物質の密度
- 固体・液体の場合は、基準として4℃の水(密度1.000 g/cm³)を使うのが一般的です。
- 気体の場合は、基準として空気を使います。
比重には単位がありません(「倍」を表す数字なので、g/cm³のような単位は付きません)。
これを「無次元量」と呼びます。
密度と比重、何が違うの?

ここが今回いちばん誤解されやすいポイントです。整理すると次のようになります。
| 項目 | 密度 | 比重 |
|---|---|---|
| 意味 | 単位体積あたりの質量 | 基準物質(主に水)に対する比率 |
| 単位 | あり(g/cm³ など) | なし(単なる数値) |
| 温度の影響 | 受ける (測定した物質自体の体積が変わる) |
基準物質と測定物質、両方の温度の影響を受ける |
面白いのは、水の密度がほぼ1.00 g/cm³であるため、液体や固体の「比重」の数値は、多くの場合「密度(g/cm³)」の数値とほとんど一致するという点です。
たとえばエタノールの密度は約0.79 g/cm³で、水に対する比重も約0.79。
数値としては同じに見えるため混同されがちですが、「単位がある絶対的な量(密度)」なのか「単位のない相対的な比率(比重)」なのかという、性質の違いをおさえておくことが大切です。
実際の現場では、主成分が同じだとしても比重をはじめとした沸点や動粘度等の物性の違いを考慮した製品選びが重要なポイントになってきます。
どうやって測るの?(代表的な測定方法とJIS規格)

密度・比重は、測る対象(固体・液体・気体)によって方法が異なります。
日本ではJIS(日本産業規格)で測定方法が細かく定められています。
液体の測定方法(JIS Z 8804「液体の密度及び比重の測定方法」)
容積が正確にわかっているガラス製の小瓶(比重瓶)に液体を満たし、質量を精密天びんで量ることで密度を求める、最も基本的な方法です。
目盛りの付いたガラス製の浮き(浮ひょう)を液体に浮かべ、沈む深さから密度・比重を読み取る方法。お酒のアルコール度数計や車のバッテリー液のチェックなどにも使われている、とても身近な方法です。
細いガラス管に液体を流し込み、管を振動させたときの振動数の変化から密度を計算する方法。少量の試料で素早く測定できるため、現在は研究室や工場での品質管理でよく使われています。
より高精度な測定が必要な場合に用いられる専門的な方法です。
プールの水よりも塩分濃度の高い海水の方が浮きやすい(=密度が大きい)のと同じ原理です。

固体の測定方法(JIS Z 8807「固体の密度及び比重の測定方法」)
試料を空気中と液体中でそれぞれ量り、その質量差(浮力)から体積を求めて密度を計算する方法。お風呂に体を沈めるとお湯があふれる、あの原理(アルキメデスの原理)を利用しています。
粉末や小さな固体片を比重瓶に入れ、液体を満たして質量を量ることで、固体試料の密度を求める方法です。
化学製品全般の測定方法(JIS K 0061「化学製品の密度及び比重測定方法」)
塗料や薬品、溶剤など、化学製品の密度・比重を測定する際の標準的な方法として、上記の比重瓶法や振動式密度計などの手順がまとめて規定されています。
代表的な物質の密度一覧

身の回りの物質の密度(20℃前後の目安値)をまとめました。
金属の密度
| 物質 | 密度(g/cm³) |
|---|---|
| マグネシウム | 約1.74 |
| アルミニウム | 約2.70 |
| 鉄 | 約7.87 |
| 銅 | 約8.96 |
| 鉛 | 約11.35 |
| 銀 | 約10.49 |
| 金 | 約19.32 |
液体の密度
| 物質 | 密度(g/cm³) |
|---|---|
| 水(4℃・最大値) | 1.000 |
| エタノール | 約0.79 |
| 食用油 | 約0.90〜0.92 |
| ガソリン | 約0.75 |
| 1-ブロモプロパン | 約1.35 |
| フッ素系液体 | 約1.3〜1.8 |
| 水銀 | 約13.5 |
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主成分: パーフルオロポリエーテル
引火点: なし
沸点: 約170℃
プラスチック・その他の密度
| 物質 | 密度(g/cm³) |
|---|---|
| 発泡ポリスチレン | 約0.02 |
| ポリプロピレン(PP) | 約0.90〜0.91 |
| ポリエチレン(PE) | 約0.92〜0.97 |
| PET樹脂 | 約1.35〜1.40 |
| 木材(杉など) | 約0.38〜0.4 |
| ガラス | 約2.3〜2.5 |
| コンクリート | 約2.3 |
PET樹脂そのものは水に沈む密度(約1.35〜1.40 g/cm³)を持つ一方、キャップの多くはポリプロピレン製で水に浮く密度(約0.90 g/cm³)です。
このような密度の違いは、リサイクル工程でPETと他の樹脂を分離する際に利用されています。
なお、実際のリサイクル工程では、比重分離だけでなく、風力分離など複数の方法が使われています。

温度によって密度は変わる?(温度依存性)

物質は温度が上がると、多くの場合「熱膨張」によって体積が大きくなります。質量は変わらないのに体積が増えるため、温度が上がると密度は小さくなるのが一般的な傾向です。これは特に液体や気体で顕著です。
水は例外的な性質を持つ
ところが水には、化学の世界でも有名な「例外」があります。
水の密度は4℃(正確には3.98℃)で最大(約1.000 g/cm³)になり、そこから温度が上がっても下がっても密度は小さくなります。
これは水分子どうしが「水素結合」という結びつきを作る性質によるもので、氷になると分子が規則正しく並んで隙間の多い結晶構造をとるため、体積が増えて密度が小さくなります。
氷が水に浮くのはこのためです。
もし氷が水より重かったら、冬の湖は底から凍っていき、水中の生き物は生きていけなかったかもしれません。

バーナーで気球内の空気を暖めると、空気は膨張して密度が小さくなり、周囲の冷たい(密度の大きい)空気に押し上げられるように浮力が生まれます。
密度に限らず、様々な物性が温度によって変化するので、現場では実際に使用する温度条件下での物性を把握しておくことも重要になります。
まとめ
① 密度とは?
単位体積あたりの質量を表すのが「密度」です。単位にはg/cm³などが使われます。
② 比重とは?
「比重」は、基準物質(主に4℃の水)に対する比率を表します。密度とは異なり、単位はありません。
③ 測定方法はJISで規定
密度・比重の測定方法は、対象によってJIS規格が定められています。液体はJIS Z 8804、固体はJIS Z 8807、化学製品全般についてはJIS K 0061に測定方法が規定されています。
④ 密度の違いは身近なところでも活用
物質によって密度は大きく異なります。この密度の違いを利用して、リサイクル時の分別など、身近な場面でも活用されています。
⑤ 温度による密度の変化
多くの物質は、温度が上がると密度が小さくなります。ただし、水は4℃で密度が最大になるという特殊な性質を持っています。
普段何気なく使っている「軽い」「重い」という感覚の裏には、こうした密度・比重の違いが隠れています。
物性の違いを考慮した製品選びにお困りの際は、ぜひ当社までお気軽にお問い合わせください。
