
沸騰冷却PCや液浸冷却PCをご自身で製作されている人気のYouTubeチャンネル「のすけ【自作PC】」様の最新動画『最強の冷媒はどれ? 沸騰冷却システムで4種類の冷媒を徹底比較!』が公開されました!
4月に開催予定のMODPC展示会に向けて、ThermaltakeのPCケース「The Tower 300」にインストールされた沸騰冷却システム。
今回は展示会仕様へのアップデートとして、本番で使用する最適な冷媒を決めるための徹底検証が行われています。
実は今回のプロジェクトにあたり、カネコ化学からも新しい冷媒を提供させていただきました。
人気のYouTubeチャンネル「のすけ【自作PC】」様にご協力いただき、最新動画で紹介された沸騰冷却システムにおける新冷媒を含む4種類の比較と徹底検証の結果を詳しくご紹介します。
この記事をお読みいただくことで、テストされた4種類の冷媒(HFE-7100、PF-55、フロスタ™ SHZ-289、YY-1000)それぞれのリアルな挙動や、沸点の違いが実際のCPU温度にどのような影響を与えるのかを、順を追って詳しく理解することができます。
液浸冷却や沸騰冷却のシステム構築を検討されている技術者や開発者の方にとって、実運用を見据えた冷媒選びの具体的なヒントとなるはずです。
それでは、検証のスタートから詳しく見ていきましょう。
供給量の限られているガルデン® HT-55の互換品に!
2025年生産終了、フロリナート™ FC-72の代替に!
主成分: パーフルオロポリエーテル
引火点: なし
沸点: 約55℃
前回の動画はこちら!
目次
【自作PC】最強の冷媒はどれ? 沸騰冷却システムで4種類の冷媒を徹底比較!
まずは実際に公開された動画をぜひご覧ください!
実際の沸騰冷却の様子や、冷媒比較実験の様子、展示会仕様にアップデートされた自作のオリジナル沸騰冷却PC、のすけ様の詳細な解説は必見です!!
4種類の冷媒比較テスト:結果と考察

今回の検証は、室温が約20℃の環境で行われました。
システム全体が冷えている状態で、真空ポンプを使って飽和蒸気圧まで減圧します。
この時点(アイドル時)でのケース内の圧力は約-60kPa、CPU温度は約59℃からのスタートです。
ここから「CPU-Z」というソフトウェアを使用してCPUに高い負荷をかけ、温度変化をじっくり観察していきます。
まずは、比較の基準となる冷媒のテストからです。
1つ目の冷媒:HFE-7100(沸点59℃)

まずは基準となる沸点59℃の「HFE-7100」からです。
ちなみにこちらのHFE-7100は、3M™社の「Novec™ 7100」の代替品として広く利用されており、同等の優れた冷却性能と電気絶縁性を持つ信頼性の高い冷媒です。
負荷をかけ始めると、最初は「突沸(とっぷつ)」と呼ばれる突発的な沸騰現象が見られましたが、その後はポコポコと安定した沸騰状態に入りました。(この現象は稀にあるとのこと。)
- 10分後のCPU温度: 88.8℃
- 10分後の圧力: 約-50kPa (アイドル時から10kPaほど上昇)
結果は前回のテストとほぼ同じになり、安定した挙動が確認できました。
ひとまずこの「約89℃」という温度が、今回の検証における比較の基準となります。
2つ目の冷媒:PF-55(沸点 約55℃)

供給量の限られているガルデン® HT-55の互換品に!
2025年生産終了、フロリナート™ FC-72の代替に!
主成分: パーフルオロポリエーテル
引火点: なし
沸点: 約55℃
2つ目にテストされたのは、PFPE(パーフルオロポリエーテル)系の冷媒「PF-55」です。
基準となるHFE-7100(沸点59℃)よりも初留点が55℃と低いため、順当にいけばCPU温度もさらに下がるはず!と期待が高まります。
アイドル時の圧力は約-60kPa、CPU温度は約55℃からのスタートです。
CPU-Zで負荷をかけ始めた直後は順調に沸騰しているように見えましたが、時間経過とともに意外な結果が待っていました。
CPU温度が徐々に上がっていき、なんと90℃を超えてしまったのです。
- 10分後のCPU温度: 92.9℃
- 10分後の圧力: 約-46kPa
沸騰の様子自体はHFE-7100と大きく変わらないように見えましたが、なぜ基準としたHFE-7100よりも温度が上がってしまったのでしょうか?
この理由として、PF-55は厳密には単一成分ではなく、分子量の異なるポリマーの混合組成であることが大きく影響していると考えられます。
沸騰が進むにつれて液体の組成が変化し、予想よりも低分子の成分が上手く回収・循環できず、見かけ上の沸点が徐々に上がってしまったことで期待された冷却能力が発揮されなかったと考えられます。
液自体のスペックは非常に優秀なものですが、今回の沸騰冷却システムには少々向かなかったようです。
3つ目の冷媒:フロスタ™ SHZ-289(沸点 約49℃)

続いてテストされたのが、新しいフッ素系液体「フロスタ™ SHZ-289」です。
沸点が49℃と50℃を下回っているため、冷却性能に大きな期待がかかります。
アイドル時の圧力は約-58kPa、CPU温度は約50℃からのスタートです。
CPU-Zで負荷をかけると、これまでの冷媒と比べて温度上昇が目に見えて緩やかになりました。
沸騰の様子もこれまでのテストの中で最も激しく、しっかりとCPUから熱を奪っていることが視覚的にもわかります。
- 10分後のCPU温度: 79.9℃
- 10分後の圧力: 約-40kPa
結果は、ギリギリですが目標としていた80℃以下に収まる素晴らしい数値となりました。
かなりの本命候補として躍り出ます。
最後の冷媒:YY-1000(沸点 約35℃)

最後に検証されたのは、今回テストする中で最も沸点が低い35℃の「開発品YY-1000」です。
沸点が低いため、アイドル時の圧力は約-36kPa、CPU温度は約44℃で、なんと負荷をかける前からすでに沸騰が始まっています。
負荷をかけると「さすが沸点35℃」と驚くほど、沸騰の勢いがさらに増しました。
- 10分後のCPU温度: 77.1℃
- 10分後の圧力: 約-20kPa
4種類の冷媒の中で最も低いCPU温度を記録し、圧力もまだ負圧の領域で安定できました。
冷却性能だけを見ればトップの結果ですが、沸点が低すぎるため夏場の管理が難点です。
結論:展示会で使用される「最強の冷媒」はどれに?

まずは、今回テストされた4種類の冷媒の検証結果を一覧表で振り返ってみましょう。
| 冷媒名 | 沸点 | 10分後 CPU温度 |
10分後 圧力 |
最終評価 |
|---|---|---|---|---|
| HFE-7100 | 約59℃ | 88.8℃ | 約-50kPa | 比較の基準 |
| PF-55 | 約55℃ | 92.9℃ | 約-46kPa | 温度上昇のため脱落 |
| フロスタ™ SHZ-289 | 約49℃ | 79.9℃ | 約-40kPa | 採用(ベストバランス) |
| YY-1000 | 約35℃ | 77.1℃ | 約-20kPa | 取り扱いに課題 |
今回の検証結果を冷媒の沸点で整理すると、PF-55を除く3種類の冷媒はほぼ直線上に並ぶ結果となりました。
つまり、「冷媒の冷却能力は沸点の低さに大きく影響される」ことが実証された形です。
CPU温度が最も低くなったのはYY-1000(沸点35℃)でしたが、のすけさんが最終的に展示会用の冷媒として選択したのは、フロスタ™ SHZ-289でした。
「性能と安全性のベストバランス」が、最終的な採用の決め手となったようです。
まとめ:沸騰冷却システムの冷媒比較テストを振り返って
今回の記事では、「のすけ【自作PC】」様のYouTube動画をもとに、展示会に向けた沸騰冷却システムの冷媒比較テストの様子を振り返りました。
同じ環境下で4種類の冷媒(HFE-7100、PF-55、フロスタ™ SHZ-289、YY-1000)をテストした結果、今回も冷媒の冷却能力は「沸点の低さ」に大きく影響されることが実証されました。
実際のシステム運用においては単なる冷却性能(CPU温度の低さ)だけでなく、季節や室温の変化を考慮した安定性も重要になります。
その結果、しっかりとした冷却性能と扱いやすさのベストバランスを見事に証明したフロスタ™ SHZ-289が展示会本番用の冷媒として採用されることとなりました。
動画内で見られたポコポコと勢いよく沸騰する様子や、冷媒の入れ替えに奮闘する姿は、自作PCのロマンとこだわりが詰まっていて非常に見応えがありましたね。
4月の展示会での実機のお披露目が今から楽しみです。
▶ アスクフェス(ASK FES) にて実機がお披露目される予定です!
カネコ化学では、今回ご紹介したHFE-7000シリーズやPFシリーズ、さらには特殊な開発品に至るまで、お客様の課題や使用環境に合わせた最適な機能性液体をご提案いたします。
製品に関する詳細情報、ご質問、お見積りのご依頼等はお気軽に当オンラインストアまでお問い合わせください。
本日もご覧いただき、誠にありがとうございました!



