
「今使っている溶剤を、 特化則 (特定化学物質障害予防規則)の規制にかからないものに代替できないか検討して」
そう上司から言われたものの、
「そもそも今の溶剤に、どんなリスクがあるの…?」と困っていませんか?
製造現場・購買担当の方にとって、化学物質の法規制は専門用語が多く、「代替検討」と言われても何から手をつければいいのか分かりにくいものです。

上司に「特化則にかからない溶剤を探して」と言われたけど、何がリスクなのかピンとこない

今の溶剤を使い続けた場合と、切り替えた場合で何が変わるのか比較できない

対策すれば使い続けられるのか、それとも切り替えたほうがいいのか判断がつかない
特化則の対象物質を使い続けることにどんなリスクがあるのかを整理したうえで、
対象外(非該当)の溶剤へ切り替えることでどんなメリットが得られるのかを解説します。
この記事をお読みいただくことで、特化則の対象物質を使い続けることにどんなリスクがあるのか、その基礎知識と、非該当溶剤へ切り替える際の判断ポイントがわかります。
さらに、上司から「代替検討」を指示されたものの何から手をつければよいか分からない…というお悩みに対し、「対策を積み上げて使い続ける」か「切り替えて対策自体を不要にする」かを比較検討するための考え方もあわせてご紹介します。
特化則への対応は継続的なコストと手間がかかるものですが、本記事が代替検討を進めるうえでのヒントとなり、リスクの少ない安定した溶剤選定を実現する手助けとなれば幸いです。
塩素系、臭素系に並ぶ高い洗浄力を持つ強力フッ素系洗浄剤
主成分: trans-1,2-ジクロロエチレンとHFE系溶剤
引火点: なし
沸点: 約47℃
特化則の対象物質を使い続けることの3つのリスク

上司からの「代替検討」の指示の背景には、今の溶剤を使い続けることに関する、次の3つのリスクがあります。
対象物質は、がん・皮膚炎・神経障害などの健康障害につながるおそれがあるとして、法律で管理が義務付けられている物質です。事故のようにその場でケガをするわけではなく、何年も経ってから症状が現れることがあるため、対策が不十分だと被害に気づいたときには手遅れというケースも起こり得ます。
万が一、健康障害が労災と認定された場合、治療・補償対応に加え、原因究明や再発防止のための追加対応が発生し、会社にとって大きな負担となります。
特化則の対象物質である限り、換気設備・保護具・健康診断などの管理体制を「継続的に」維持し続けなければなりません。これを怠ると、労働基準監督署からの是正指導や改善命令の対象になることがあります。
この3つのリスクのうち、①の健康リスクが根本にあり、②③はその結果として発生するリスクです。
「代替検討」とは、突き詰めると、この3つのリスクをどこまで許容し続けるかを見直す業務だと言えます。
特化則の対象となる「特定化学物質」とは

そもそも自社の溶剤がリスクの対象かどうかを判断するには、特化則が定める「特定化学物質」の分類を知っておく必要があります。
特化則では、危険性の高い化学物質を以下の3つに分類しています。
第一類物質
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、特に有害性が高く、製造に厚生労働大臣の許可が必要な物質
代表例:ジクロロベンジジン、ベリリウム など第二類物質
がん等の慢性障害を引き起こす物質のうち、第一類物質に該当しないもの。発散抑制対策(換気・密閉等)が義務付けられる
代表例:ベンゼン、クロロホルム、酸化プロピレンなど第三類物質
大量漏えい時に急性中毒等を引き起こすおそれがある物質
代表例:アンモニア など代表的な物質とその主な健康リスクをまとめると、以下のとおりです。
| 物質名 | 主な健康リスク |
|---|---|
| ベンゼン | 白血病などの原因になることがある |
| クロロホルム | 肝臓・腎臓への影響、発がん性 |
| 酸化プロピレン | 発がん性 |
| ベリリウム | 肺の病気 |
上司から依頼された「代替検討」は、まず自社で使用中の溶剤がこの対象物質リストに該当するかどうかを確認することが最初のステップになります。
対象物質は年々追加されている

特化則の対象物質は、一度決まったら固定されているわけではなく、健康被害の知見が蓄積するたびに追加されてきた歴史があります。
過去の主な追加例は以下のとおりです。
3月1日
4月1日
4月1日
1月1日
10月1日
※胆管がん事案を受けて追加
11月1日
※有機則の対象物質から特化則対象へ移行
11月1日
1月1日
6月1日
4月1日
このように、これまで規制対象ではなかった物質が、後になって特定化学物質に追加指定されるケースが繰り返し起きています。
つまり「現時点で対象外の溶剤」であっても、将来的に対象物質へ追加される可能性がゼロとは言い切れません。
この点も、代替検討を行う際にあわせて意識しておきたいポイントです。
特化則の管理義務は「使い続ける前提」の対策である

対象物質に該当する場合、特化則では会社に対して主に以下の義務が課されます。
ポイントは、これらはすべて「対象物質を使い続けること」を前提にした対策だという点です。
① 換気設備の設置
発生源の近くで蒸気を吸い取る局所排気装置などの設置が必要です。
② 密閉化
密閉容器・密閉配管・密閉タンクなどで、そもそも物質を空気中に出さない対策です。
③ 保護具の備え付けと着用
防毒マスク・保護メガネ・保護手袋などの使用義務(会社・労働者双方)があります。
④ 特殊健康診断の実施と記録の保管
原則6ヶ月以内ごとに1回、対象業務従事者への健康診断を実施します。その記録は原則30年間保管する義務があります。
⑤ 安全な作業方法の徹底
タンク清掃・配管分解など高リスク作業での手順策定・作業主任者の配置などが求められます。
⑥ 作業環境測定と記録の保管
定期的に複雑な手順が必要な現場の空気検査があり、検査結果が悪ければ局所排気装置の強化など、即座に対策を迫られます。その結果は、原則30年間保管する義務があります。
これらの対策は、いわば「危険な溶剤を使い続けるために必要な、継続的なコストと手間」です。
設備投資だけでなく、健康診断の実施や作業手順の管理など、運用フェーズでも継続的な工数がかかり続けます。
非該当溶剤へ切り替えることで得られるメリット

ここで発想を変えると、「対象物質を使い続けたまま対策を積み上げる」以外に、「そもそも対象外の溶剤に切り替えることで、対策自体を不要にする」という選択肢があります。
換気設備を整えれば、対象物質を使い続けることは可能です。
しかし、溶剤そのものを非該当品に切り替えてしまえば、その換気設備も、保護具の管理も、定期的な特殊健康診断も、そもそも「不要」になります。
これが、代替検討がコスト削減につながる最大のポイントです。
非該当溶剤へ切り替えることで期待できるメリットを整理すると、次のとおりです。
換気設備の維持・点検、保護具の購入・管理、定期健康診断の実施といった継続的なコストが不要になります。
作業主任者の配置や特別な作業手順の策定が不要になり、現場のオペレーションが簡素化されます。
特化則に基づく管理記録の作成・保管や、労基署対応などの事務負担が軽くなります。
対策で「リスクを抑える」のではなく、対象物質を使わないことで「リスクの発生源自体をなくす」ことができます。
対象物質は今後も追加される可能性があるため、非該当の中でもより安全性の高い溶剤を選ぶことで、将来の規制強化への備えにもなります。
つまり、特化則の対策は「使い続けながらリスクを管理する」アプローチであるのに対し、非該当溶剤への切り替えは「リスクの管理自体を必要としない状態をつくる」アプローチだと言えます。
比較表:汎用溶剤と弊社洗浄剤の物性・法規制
各洗浄剤・溶剤の物性値や法規制の違いを一覧にまとめました。
代替の可能性を探る際の参考にしてください。
| 製品名 | eクリーン21 N |
eクリーン21 HFE-401 |
ネクシアX | ジクロロメタン (塩化メチレン) |
トリクロロ エチレン |
エチルベンゼン (キシレンに含有) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 引火点 | なし | なし | なし | なし | なし | 22.5℃ |
| 消防法 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | 該当 |
| 有機則 | 非該当 | 該当 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | 非該当 |
| 特化則 | 非該当 | 非該当 | 非該当 | 該当 | 該当 | 該当 |
| PRTR | 該当 | 該当 | 非該当 | 該当 | 該当 | 該当 |
| 安衛法 リスクアセスメント |
該当 | 該当 | 非該当 | 該当 | 該当 | 該当 |
| 主な用途 | 金属脱脂・精密洗浄 | 脱脂洗浄・ フラックス洗浄 |
脱脂洗浄 管理が容易 |
強力な金属脱脂・ 剥離剤 |
金属脱脂・ 精密洗浄 |
塗装・金属洗浄の 希釈 |
| 製品ページ | 詳細・購入 | 詳細・購入 | 詳細・購入 | – | – | – |
まとめ:「対策する」か「代替する」かは天秤にかけて判断できる

▶ 有機則・特化則に該当しない代替溶剤のラインナップを見る
現場で対策を積み上げて「有害なリスクを抱えながら使い続けるコスト」と、初期の試験コストを払ってでも「切り替えて将来の対策・管理コスト自体をゼロにするメリット」を天秤にかけ、会社の未来にとってどちらが合理的かを判断する極めて前向きな業務です。
※対象となる汚れや、現場の設備環境によって最適な製品は異なります。本格導入の前に、まずは少量のテストサンプルにて現場での性能試験をおすすめしております。お気軽に代替のご要望をお聞かせください。

社内の安全基準や法規制の見直しで、今の溶剤のままでいいのか見直したい

今の溶剤が特化則に触れていて、リスクを避けるために非該当の代替品を探している
まずはご相談からでも大歓迎です!
カネコ化学では、豊富な専門知識を持ったスタッフがお客様の現場の課題に寄り添い、最適な代替プランをご提案いたします。
代替品に関するご相談や、お見積りのご依頼はぜひお気軽に弊社お問い合わせ窓口までご連絡ください。
本記事がお客様にとって最適な代替品検討の一助となれば幸いです。
本日もご覧いただき、誠にありがとうございました!


