技術情報

完全フッ素化液体「ガルデン®」とは?特徴と代表製品を解説!

半導体製造装置の精密な温度管理、データセンターの液浸冷却、そして電子部品の信頼性試験。

これら過酷な条件下での熱媒体や試験用途には、主に2種類の完全フッ素化液体が使用されてきました。

ひとつが3M™フロリナート™に代表されるPFC(パーフルオロカーボン)。
それと双璧をなす存在であるのがソルベイ社の「ガルデン®シリーズ」に代表されるPFPE(パーフルオロポリエーテル)です。

この記事では…

Solvay社ガルデン®シリーズに代表される
完全フッ素化液体PFPE(パーフルオロポリエーテル)」について詳しく解説します。

しかし今、このフッ素系不活性液体市場は、大きな問題を抱えています。

一つは、PFC製品群がメーカーの生産終了や環境規制強化に直面していること。

そしてもう一つは、その代替品として注目されるPFPEでさえも生産量が限られ入手が困難になっているという供給面の課題です。

ここからは、ソルベイ社の「ガルデン®」を代表とするPFPEに焦点を当て、その基礎知識から特徴、弊社互換品のラインナップまで詳しく解説します。


供給量の限られているガルデン® HT-135の互換品に!
アサヒクリンAC-6000の代替にもご検討いただけます。

主成分: パーフルオロポリエーテル

引火点: なし

 沸点: 約135℃


供給量の限られているガルデン® HT-170の互換品に!

主成分: パーフルオロポリエーテル

引火点: なし

 沸点: 約170℃

ガルデン®(PFPE)ってなに?:特徴とメリットを解説!

ガルデン®(PFPE)の構造

ガルデン®が持つ幅広い温度特性と安定性を理解する鍵は、その主成分であるPFPE(パーフルオロポリエーテル)の化学構造にあります。

PFPEPer Fluoro Poly Ether)とは、PFCと同じく完全に(per)フッ素(F)化された炭素を基本としながら、その炭素の鎖の間に酸素(O)がエーテル結合(-O-)として組み込まれているのが最大の特徴です。

そる太

パーフルオロの骨格の間に、エーテル(-O-)繰り返し(poly)たくさん入っている、とイメージすると分かりやすいね!

この分子構造の最大のポイントは、炭素とフッ素の結合(C-F結合)が、有機化学の中で最も強い結合の一つであることです。

この強力な結合エネルギーに加え、原子の中でも特に大きいフッ素原子が炭素の骨格を隙間なくガードしています。
このフッ素の盾(シールド)が外部からの化学的な攻撃を一切受け付けません。

この極めて堅牢な化学構造のおかげで、化学的・物理的に非常に高い安定性を誇ります。

PFCにはないユニークな特性

PFCと大きく異なるのは、骨格にエーテル結合(-O-)を持つ点です。

この酸素原子が、まるで鎖の蝶番(ちょうつがい)のように機能することで、分子全体が非常にしなやかな動きをすることが可能になります。

この「分子のしなやかさ」こそが、PFPEが持つ以下のユニークな特性の源泉となっているのです。

PFPE(パーフルオロポリエーテル)の特徴

ガルデン®(PFPE)はPFCと多くの優れた特徴を共有しつつ、その独自の分子構造からくるさらにユニークな長所をあわせ持ちます。

ここでは、その特性を「物理・化学」「環境」「安全」「国内外の法規制」の順に見ていきましょう。

物理的・化学的特性

  • 極めて広い液体温度範囲
    PFPEの最大の特長であり、PFCと比較して明確なアドバンテージです。
    分子の柔軟性が高いため、-100℃近い極低温から290℃といった高温まで、非常に広い温度範囲で液体の状態を維持します。これにより、単一の液体で多様な温度環境に対応できるため、システム設計の簡略化や運用コストの削減に貢献します。
  • 優れた粘度特性
    温度が変化しても粘度の変化がPFCに比べて小さく、幅広い温度域で安定した流動性を保ちます。これにより、精密な温度制御が必要な用途や、低温起動が求められる環境下でも、安定した性能を発揮します。
  • 優れた熱安定性・化学的安定性
    熱や酸化に対して極めて高い安定性を誇り、高温下での長期使用でも変質しにくい特性を持ちます。また、薬品や金属、樹脂など、ほとんどの素材に影響を与えません。
  • 高い電気絶縁性
    優れた電気絶縁性を有するため、通電状態の電子機器を直接冷却する「液浸冷却」や各種試験に最適です。

環境特性

  • オゾン層破壊係数(ODP)がゼロ
    分子内にオゾン層を破壊する塩素を含まないため、ODPは完全にゼロです。
  • 【注意点】高い地球温暖化係数(GWP)
    PFCと同様に化学的に極めて安定なため大気中で分解されにくく、GWPが高いことが課題とされています。

安全性

  • 引火点なし
    引火点がないため、火災リスクを大幅に低減でき、防爆設備が不要になるなど安全な作業環境の構築に貢献します。
  • 極めて低い毒性
    人体への影響が非常に少なく、許容濃度も高いため、有機溶剤中毒予防規則(有機則)にも該当せず、作業者の健康リスクを最小限に抑えられます。

国内外の法規制

  • 国内法規制:
    PRTR法、有機則、消防法(危険物)など、多くの国内法規制に非該当のため、設備や管理の負担を軽減できます。
  • 地球温暖化対策:
    GWPが高いことから、地球温暖化対策推進法で排出削減が求められるガスに該当します。
  • 欧州の動向(REACH規則):
    フロリナート™の一部製品で懸念されているSVHC(高懸念物質)には、現在のところガルデン®の主要なPFPEは該当していません。これは代替品選定における重要なポイントです。

ガルデン®(PFPE)の主な用途

ガルデン®(PFPE)はその卓越した性能から、特に高い信頼性や安全性が求められる最先端の分野で活躍しています。

特にPFCを上回る広い液体温度範囲と熱安定性を活かし、より過酷な条件下でもその真価を発揮します。

1. 冷媒・熱輸送媒体(ブライン)

PFPEの最も代表的な用途です。極めて高い化学的安定性に加え、PFCを上回る非常に広い液体温度範囲を活かし、精密な温度管理が求められる、より過酷な環境で熱を効率的に輸送します。

  • 半導体製造装置(エッチャー、CVD、テスター)のチラー循環液
  • データセンターのサーバーやCPU、パワー半導体の液浸冷却
  • 医薬品・化学プラントの反応熱の除去
  • 航空宇宙・防衛分野における電子機器の冷却

2. 信頼性試験

電気を通さず、試験対象物への影響が非常に低いため、電子部品の信頼性を評価する様々な試験に理想的な液体です。極低温から高温まで対応できるため、1液での運用も可能です。

  • 電子部品の気密性を調べるリークテスト(グロスリーク試験)
  • 高温と低温の液体に交互に浸す熱衝撃試験(サーマルショック試験)
  • 通電したまま行うバーンイン試験

3. 溶剤・希釈剤

フッ素系の物質への良好な溶解性と多くの素材への低影響性が両立されており、不活性であるため様々な化合物の溶媒や希釈剤として利用されます。

  • フッ素オイルやフッ素グリースの希釈
  • フッ素ポリマー溶解・分散媒
  • フッ素系コーティング剤の溶剤
  • 反応性が高い化学合成プロセスにおける不活性な反応媒体

ガルデン®シリーズ主要製品とその動向

PFPE(パーフルオロポリエーテル)には様々な種類がありますが、その中でもソルベイ社の「ガルデン®」は、長年にわたり市場を代表する製品群として高い信頼を得てきました。

しかし、3M社のフッ素化学品事業からの撤退発表以降、PFCからの代替需要がPFPE市場に集中し状況は一変しました。

もともとPFPEは製造メーカーが限られており、その生産能力にも限りがあるため、急激な需要増に供給が全く追いついていないのが現状です。

その結果、ガルデン®は世界的に入手困難な状況に陥っており、新規の顧客はもちろん、既存のユーザーでさえも安定的な調達が難しいという深刻な事態となっています。

こうした状況から、ユーザーにとっては単に製品の性能だけでなく「どのサプライヤーから、いかに安定的に調達するか」が事業継続のための最重要課題となっています。

以下に、代表的なガルデン®製品とその性能に準拠した弊社互換製品PFシリーズの比較をご紹介します。

ガルデン® シリーズ 主成分
(代表的な化学物質)
沸点 比重
(25℃)
弊社互換製品 (PFPE)
ガルデン® HT-135 パーフルオロポリエーテル(PFPE) 約135℃ 1.72 PF-135
ガルデン® HT-170 パーフルオロポリエーテル(PFPE) 約170℃ 1.77 PF-170

ご採用の前に必ずご確認ください 本製品をご採用いただく前には、必ずお客様の責任において実際の使用条件(装置、プロセス、温度など)での適合性評価を実施してください。特に、性能・安全性・各種部材との適合性(金属腐食、樹脂・ゴムへの影響など)に問題がないことを十分にご確認いただけますよう、お願い申し上げます。

ガルデン®互換製品と弊社の強み:PFシリーズ


供給量の限られているガルデン® HT-135の互換品に!
アサヒクリンAC-6000の代替にもご検討いただけます。

主成分: パーフルオロポリエーテル

引火点: なし

 沸点: 約135℃


供給量の限られているガルデン® HT-170の互換品に!

主成分: パーフルオロポリエーテル

引火点: なし

 沸点: 約170℃

弊社ガルデン®互換製品の強み

弊社のガルデン®互換製品「PFシリーズ」には、お客様に安心してご選定いただける3つの具体的な強みがあります。

品質へのこだわり

厳格な品質管理体制のもと、安定した品質の製品をお届けします。ここで重要なのは、「高純度=高品質」とは限らないという点です。弊社はメーカーとしての知見と高い技術力・分析能力を駆使し、お客様の用途に影響を及ぼし得る微量不純物まで考慮した、真に「高品質」な製品づくりにこだわっています。

安定供給と少量からの提供

国内外のネットワークを活かし、お客様の必要量に応じた安定供給体制を整えています。少量からのご注文にも対応可能ですので、研究開発段階でのご使用や小規模な生産ラインにも最適です。

充実した技術サポート

お客様の具体的な用途や課題を丁寧にヒアリングし、最適な製品選定から使用方法のご提案、トラブルシューティングに至るまでご採用後もきめ細やかな技術サポートを提供いたします。

PFPEからHFEへ:環境にやさしい次世代のフッ素系液体

これまで、高い性能が求められる高性能なPFPE製品をご紹介してきました。

しかし、用途によっては別の選択肢も存在します。

それが、「HFE(ハイドロフルオロエーテル)」への置き換えです。

HFEとは、3M™社のNovec™シリーズで広く知られるようになった、PFCの環境性能、特にGWP(地球温暖化係数)を大幅に低減することを目的に開発されたフッ素系液体です。

どのような用途でHFEへの置き換えが可能か?

ただし全てのPFPE用途をHFEでカバーできるわけではありません。

PFCが持つ極めて高いレベルの熱的・化学的安定性が必要な、過酷な条件下での熱媒体や信頼性試験などには、引き続きPFCやPFPEが適しています

一方で、以下のような用途ではPFPEからHFEへの置き換えが有効な選択肢となります。

これらの用途では、HFEが持つ適度な溶解性や低いGWPといったメリットがPFCを上回る価値を提供する場合があります。

まとめ

本記事では、「ガルデン®」を代表とするPFPE(パーフルオロポリエーテル)の優れた特性と、現在の市場が直面する世界的な供給難について詳しくご紹介しました。

PFPEは、その卓越した熱安定性と広い液体温度範囲から、PFCと双璧をなす高性能液体として不可欠な存在です。

しかし、PFCの生産終了に加え、その主要な代替品であるPFPEも入手困難という状況は多くのユーザーにとって深刻な課題となっています。

この変化は、単に製品の性能を比較するだけでなく、「いかに安定した供給ルートを確保するか」という、サプライチェーン戦略を見直す重要な転換点であると私たちは考えています。

貴社の安定稼働を支える、2つのソリューション

弊社では、この困難な市場環境に対応するため、お客様の状況に合わせたソリューションをご用意しております。

  1. 1高性能が求められる用途に:PFPE「PFシリーズ」

    ガルデン®シリーズの互換品として高い性能を維持しつつ、安定供給・少量からの提供を実現します。
    熱媒体や信頼性試験など事業の根幹を担う用途でお使いだが、入手にお困りのお客様へ。

  2. 2環境負荷低減・コストを重視するなら:HFE「HFE-7000シリーズ」

    GWP(地球温暖化係数)を大幅に低減した、環境配慮型の選択肢です。PFPEほどの高性能が不要な用途では、より安価で入手しやすいHFEが最適な場合があります。

このようなお悩みはありませんか?

  • ガルデン®やPFPE製品を探しているが、供給不安入手困難で困っている。
  • フロリナート™(FC-40, FC-3283など)の生産終了で、信頼できる代替品を探している。
  • 電子部品の熱衝撃試験やリークテストの品質を、今後も維持・向上させたい。
  • 専門的な技術サポートを受けながら、最適な選定したい。

弊社はお客様一人ひとりが直面する課題を丁寧に伺い、PFPEとHFE、両方の選択肢の中から豊富な製品知識と技術力をもって最適な一滴をご提案いたします。

製品に関する詳細情報、ご質問、お見積りのご依頼等はお気軽に当オンラインストアまでお問い合わせください。

本日もご覧いただき、誠にありがとうございました!

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